価格変化にジャンプを伴う株価の数学モデルを考察する場合に、極端なジャンプが生じる状況の背景には、株式の売買において売りが売りを呼んだり、買いが買いを呼ぶような状況で顕著であることが実務家(いわゆる株屋さん)との討論から明らかになった。そこで、これらの要因によって生じる極端な株価の動きを、マーケッティングの世界でネットワーク外部性、生物の増殖過程でGompertzモデルとして知られているものに確率的な成分を付加した新しいモデルを構築した。すなわち、価格がネットワーク外部性の影響を受けるような資産に対して、確率的Verhulst-Gompertzモデルで定式化し、その確率的性質を明らかにした。次に、このモデルで記述される原資産のデリバティブ価格式をマルチンゲール評価法で導出し、さらに、Black-Scholes価格モデルに従う原資産と交換する交換オプション価格も同様の評価法で明示的に与えた。この種のオプションは前者をエネルギー・スポット価格、後者をエネルギー商社の株価とすれば、エネルギー価格の高騰をヘッジしたいエネルギー需要者にとってメリットがある。手法的には、価格がそれぞれBlack-Scholes価格モデルと確率的Verhulst-Gompertzモデルに従う原資産の割り引かれた価格過程を同時にマルチンゲールにする確率測度の構成である。この測度のもとで、ヨーロッパ型バニラ・コールとプット・コールとの間に成り立つパリティに類似した関係式を導出し、その成果を論文として公刊した。 また、ものづくりで安定した製品を生み出す場合に重要な資金管理の観点から、ヘッジの概念がいかに重要であり、とくに、輸出を中心とする企業にとってその手段として先物やデリバティブの考え方が必須のものであるかを論じた論文も発表した。
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