自然界では多結晶金属に現れる粒界、森林における樹冠による空間分割、生物組織に見られる細胞パターンなど、種々の多角形分割データが得られる。われわれの研究の究極的な目標は、これらのデータに対する統計モデルを構築し、統計解析法を開発することである。 まず、所与の多角形分割データから多角形の中心点を求めるアルゴリズムを開発して、元のデータをボロノイ空間分割と見なすことにより、MCMC法によるモデル化を行った。 N個の点が与えられているとき、そのボロノイ多角形分割に関して、次の相互作用ポテンシャルを導入した。すなわち、隣接するボロノイ多角形の辺長を含む項、ボロノイ多角形の面積2乗和の項及び辺長2乗和の項のそれぞれにパラメータを掛けたポテンシャルである。そして所与の多角形分割はこのポテンシャルの下で平衡にあると仮定して、MCMCシミュレーションを行った。その結果、パラメータを変えることによりランダム型・集中型・規則型の広範なタイプの多角形分割が実現できることが分かった(H20年度統計数理研究所年度研究報告会にて一部を発表)。 さらに、シミュレーションで得られた上述のデータから、元のパラメータを推定する近似尤度法の開発に取り組んだ。
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