研究概要 |
環境問題における統計的問題、特に生態リスク評価、発生源解析および環境化学物質測定の要因分析に現れる識別問題を解決するためのベイズ的方法について研究した。また、開発した方法を実際の環境問題に適用し、方法の実用性を検証すると共に、環境問題自体の解決にも尽力した。 生態リスク評価については、毒性試験のデータが特定の種に偏在する一方で種に依存して変化する化学物質に対する種の感受性分布を合理的に統合するため、モデル選択と感受性分布のパラメータのベイズ推定を組み合わせたベイズ的方法を構築した(Hayashi and Kashiwagi, 2010)。また、東京都河川の化学物質を対象に定量的生態リスク比較を試みた(林、柏木,2009)。 発生源解析については、発生源のひとつとして食塩電解過程に由来するダイオキシン類及び類縁化合物について検討すると共に(山本他,2009)、環境汚染の事例として都内建物におけるPCB汚染源調査についても検討した(東野他,2009)。 環境化学物質測定の要因分析については、底質中有機スズの測定データを対象に、測定値の変動を規定する要因のベイズ的評価を試みた。 また、衛星搭載降雨レーダによる降雨観測について、降雨パラメータ間の統計的関係について検討し(Kozu et al., 2009)、降雨パラメータの長周期変動と短周期変動を分離推定するための1次元2スケールベイズモデルを開発した(Kozu et al., in press)。加えて、東京湾の水質についても検討した。
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