環境問題における統計的問題、特に生態リスク評価、発生源解析、および環境化学物質測定の要因分析に現れる識別問題を解決するためのベイズ的方法について検討した。また、開発した方法を実際の環境問題に適用し、方法の実用性を検証すると共に、環境問題の解決に尽力した。 生態リスク評価については方法の開発が一段落したので、残る発生源解析および環境化学物質測定の要因分析について検討した。加えて、本研究実施中に浮上した東京湾水質の長期変動および雨滴粒径分布の同定についても検討した。発生源解析については、昨年度に引き続き、未確認発生源に関する推論を実現する方法の精度と実行可能性を更に向上させるため、系統的なバイアスを逓減させるための事前分布について検討し、観測の繰り返しを時系列、空間あるいは時空間データで代替する方法の開発を進めた。要因分析については、環境測定分析統一精度管理調査の結果評価で最も関心の高い異常値に関して、その発生原因の特定を容易にするため、データが過小で本来的には推定不能な測定分析の各種要因の効果を推定可能にするベイズ的方法の開発を進めた。東京湾水質の長期変動については、定期的に水質を鉛直方向に等間隔に測定したデータを解析するため、対応する時空間季節変動モデルを開発し、東京湾水質の長期変動の立体的な特徴を明らかにした。雨滴粒径分布の同定については、衛星搭載マイクロ波降雨レーダーによる降雨量推定の精度を向上させるため、レーダー反射因子と降雨強度の関係式の精密化を行った。
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