本研究は、既存の方法がとりあげなかった、有効性(ベネフィット)と安全性(毒性・リスク)の両方をそれらのバランスに基づいて、統合し同時に評価する検定方法を確立することである。その際、バランスを定量化する方法、一つの検定結果を出すための成分の統合方法が重要な課題となる。 昨年度に考案した検定統計量についての解析プログラムを改訂してsimulationを行い、リスクとベネフィットの定量的なバランスの与え方を変化させて、第1種の過誤や検出力の改善について考察し、検定統計量の挙動を分析した。その結果、リスクとベネフィットの重みに比例して重大なエンドポイント(EP)の結果が反映されるとは限らないことがわかった。意味がある定量的な相対的重みには上限があると考えられた。検定統計量の改良のために、研究代表者らの、平成18-19年の医学的な重要性を加味した臨床試験のデザインと評価方法に関する研究の応用として、イベントを発現した被験者の割合という見方から、オッズ比として取り扱うことを検討した。合成EPとしては有効率と毒性発現率についての治療群の間でのオッズ比を、ベネフィットとリスクのバランスを反映して合成することを検討した。割合のまま取り扱う場合も検討した。割合の推定値の分散は割合の大きさに依存するので、医学的バランスを取り入れた統計量の帰無仮説下の分布の分位点を定めるのは難しい。そこで、分散を式により計算する代わりにブートストラップ法を応用することについて検討を開始した。これまでの知見を国内学会や国際学会で発表し、本研究について国内や海外の研究者と意見交換した。リスクとベネフィットの定量的なバランスを考えるための方法としては、基本情報としてその治療領域や治療法などに関する文献のシステマティックレビューやメタアナリシスを行うことが有用であると考えられた。
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