ヘモグロビンは、生体内で酸素分子を運搬する重要な蛋白質である。ヘモグロビンは、X線結晶構造解析によって得られた立体構造をもとに、ダイマー間のねじれ角を変化させることによって、4つの酸素分子を効率よく吸着していると考えられてきた。我々の研究の目的は、これまで見過ごされてきたヘモグロビンの二つのダイマーα1β1-α2β2間の距離もまた、新たな四次構造変化の指標になりうることを提唱し、分子動力学シミュレーションによって実証することであった。ダイマー間の距離が、四次構造変化の新たな指標であることを実証するには、すでにシミュレーションが終了したOxyT構造とOxyR構造に加えて、更に以下の2種類のシミュレーションをする必要があった。(1)DeoxyR構造(2)DeoxyT構造。21年度には、Deoxyヘムの力場を既存のOxyヘムの力場を修正することによって準備して、計画通りDeoxyT構造の本格的なシミュレーションを50ナノ秒実施することができた。 21年度は、計算科学研究センターの共同利用のスーパーコンピュータPrimequestを利用した。すでに、COSMOS90をPrimequest(64プロセッサコア)に移植ずみであったので、計算は予定通り順調に継続することができた。また、21年度には、本研究費を使ってPCクラスタを増強した。8ノード(64プロセッサコア)をInfiniBandで結合したPCクラスタ(PCC7)を構築して、テスト計算だけでなく、長時間の本格的な計算にも使えることを確認した。
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