研究概要 |
心筋細胞において,β1受容体の活性化により,細胞内カルシウム動態が影響を受け,収縮要素に対する機能克進へとつながる.平成21年度は,β刺激系モデルを導入したモルモット心筋細胞モデルであるKYOTOモデルと,心臓及び動脈や静脈をモデル化した循環モデルとの統合を完了し,神経制御系(圧反射)モデルからの制御出力を細胞モデルに対するβ刺激量であるイソプロテレノール濃度に変換する経験的変換式を実装した.この結果,仰臥位から立位へと起立負荷を与えたときの,動脈,上半身,下半身,静脈の血圧変動が再現可能になり,ヒトの実験結果ともよく整合する結果が得られた.また細胞モデルを用いているため,仰臥位と立位における心臓エネルギー消費が比較可能であり,さらに心拍出量も計算可能であるので,姿勢による負荷変動に対する心臓ポンプ効率の差を評価することが可能となった.心臓のポンプ効率が低下する心不全では,病態の悪化を避ける目的で仰臥位において利尿剤等の総血液量制御が行われるが,このような全身循環動態の変化も再現可能である.このような状況は,臨床的にはある程度実験データがとられているので,従来解釈が困難であった実験データについて,シミュレーションによる再現とその状況の解析を進めていくことが可能になった.
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