研究概要 |
本年度は,スプライス部位にまたがるペプチド同定法の研究をさらに進める目的で以下のとおり実施した. 1.液体クロマトグラフィーを質量分析の前段に備えたエレクトロスプレーイオン化time-of-flight型タンデム質量分析(LC/ESI-TOF MS/MS)機器でプロテオミクスを行う場合のデータ較正方法を提案し,データの精度を上げることを試みた.LC/ESI-TOF MS/MSによるプロテオームデータに対して,第一段階としてMS/MSイオンを内部の較正物質として利用してflightチューブ長の変動に起因する質量誤差を較正し,第二段階として,不感時間損失(Dead time loss)に起因する質量誤差を較正するという方法を新たに提案した.分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)の質量分析プロテオームデータを用いて検証したところ,提案手法の有効性が実証された. 2.LC/ESI-TOF MS/MSで検出されるペプチドイオンのイオン強度の予測検証を,選択的スプライシングはほとんど起こらないといわれている分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)の質量分析プロテオームデータに対して行った.しかし,良い結果が得られなかった.そこで,実際に選択的スプライシングが起こっているデータのタンパク質同定が正しく出来るかどうかから検証しなおすことにして,胚発生時に多くの遺伝子が選択的スプライシングをうけることがわかっているゼブラフィッシュ(Dania rerio)の発生プロテオームデータの取得を試みたが,よいデータを得ることが出来なかった.
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