放射線治療の分割照射に於ける生物学的効果を定量的に表す方法として直線2次モデル(LQモデル)が汎用されている。近年の高精度放射線治療技術により超短期間の照射法が実現するに伴い、従来のLQモデルに時間因子が含まれないための矛盾があることがわかった。そこで、放射線照射後の細胞死を時間関数として導入することを試みた。離散的な照射に対して離散的に細胞死が起こると仮定するモデルは、照射後の細胞死が総てアポトーシスのような間期死による細胞死となり、総ての照射が終了した直後に総ての致死効果も終了するモデルになり実際の治療後の反応性と相違するものであった。従って照射後の細胞死は主として分裂死を遂げると仮定して照射後の細胞死の時間経過を指数あるいはロジスティク曲線に従うモデルを作製した。このモデルでは照射後の分裂死の半減期と、増殖分画と倍加時間の推定が必要である。過去の臨床的知見をもとにそれぞれの値を推定してモデルの妥当性を検討した。また、それぞれの値は変数として扱っているので組合せを自由に変えることで、悪性度の違いによる反応性を示すことができることがわかった。 これらの、モデルを時間軸に沿って動かし、照射後の腫瘍の反応性を視覚的に見る方法としてボロノイ図を応用した。ボロノイ図を用いることで、ランダムに増殖する腫瘍と、ランダムに照射される腫瘍の細胞致死と増殖の様子を動的に確認でき、実際の分割照射による細胞動態を推定する助けになることが確認された。
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