研究概要 |
腫瘍細胞が放射線照射を受けてから細胞死にいたる過程は、多くの場合分裂死を遂げる。分割照射では分裂死が予測される細胞にも照射が繰り返される。この過程を経て腫瘍は経時的に縮小する。放射線の線量と生残率の関係はLQモデルでよく表されると言われるが、治療期間や照射間隔の異なる治療による生残率を求める上では、時間因子が組み込まれていないことが致命的である。そこで、研究者は照射後の分裂死を時間軸に沿った指数的な細胞死と仮定した時間組込LQモデル(LQT model)を作製した。更に、腫瘍は照射期間中もlabeling index (li)で表される比率でヴェアフルスト人口モデル(N(t))に従い増殖を続けると仮定したモデル(IIExp[-(αd+βd^2)・f(t-ti)]{N(t)}^*li/100)を作製した。 このモデルの妥当性は2次元平面にランダム関数で発生された腫瘍細胞のシードを用いてボロノイ図を作成し、腫瘍へ分割照射を行うシミュレーションを行うことで、照射後も腫瘍が縮小を続けることを明示的に確認することができた。 このモデルを発展させ経時的な腫瘍制御確率(TCP)を導き、その有用性を検討することができた。TCPは(1-S)^K=Exp(-S^*K)で表される。SはLQTモデルの生存率でKは腫瘍細胞のclonogen数と仮定できる。Kの値は文献的に報告されて前立腺癌の臨床データーの線量生存率から推定した。前立腺癌で外部照射単独の3DCRTとIMRTの症例の線量分布からLQTモデルにより生存率Sを求めた。このSとKからTCPを計算した。ここでは前立腺癌の低リスク群、中リスク群、高リスク群のα/βをそれぞれ3,7,10とした。IMRTでは3DCRTより中リスク群と高リスク群で有意にTCPが高かった(それぞれp=0.0217,p<0.0001)。
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