研究概要 |
大腸菌エネルギー代謝系の幾つかの酵素(Glk,Pgi)について、無細胞合成系で得られたものと、大腸菌細胞内で大量発現させたもので、基質濃度に対する反応速度論的パラメータ(ミカエリス・メンテン定数)がほぼ同じであることを確認した。したがって、無細胞合成系によって得られた純度の高い酵素を用いた酵素反応速度論的解析が基本的に可能であることが明らかとなった。これにより、生細胞から酵素を抽出する際に一部の酵素で問題となる他酵素のコンタミの問題を回避し、効率的に検討が進められることが示された。 多量体を形成する酵素(例:PfkA)については、分子量が大きくなるため、無細胞合成用のキット(PURESYSTEM)に記載の標準のプロトコールでは精製できないことがわかった。この場合、リボソーム除去のステップにおいて、通常のフィルタ(分子量10万Da除去)よりもポアサイズの大きいフィルタを用いる必要があった。多量体を形成する酵素は少なくないため、本知見は、無細胞合成系を用いたサンプル取得におけるノウハウとして有用である。 無細胞合成品の比活性については、大腸菌細胞内で大量発現させたものよりかなり低い場合が多かった。ウシ血清アルブミン(BSA)を活性測定時に添加することで、ある程度、活性の低下が防げる場合もあったが、それでも大腸菌細胞内で発現させたものには及ばなかった。無細胞合成時に分子シャペロン(DnaK+DnaJ+GroEまたはGroEL+GroES)を添加することも試みたが効果は無かった。酵素反応速度論的解析に無細胞合成品を利用するためには、比活性を向上する汎用的な手法を開発することが今後の課題である。
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