研究概要 |
ヘルパーT細胞には、Th1, Th2, Th17, iTregなど多数のサブタイプがあり、その比が免疫系の反応に重要である。今年度は、Th0内で上記サブタイプへの分化を決定付ける転写因子(T-bet, GATA3, RORγt, Foxp3)の産生と転写因子間相互作用を組み込んだモデルを構築した。また、iTregからTh17やTh17からTh1など再分化も組み込んだ。TCR刺激強度をTh0内のNFAT濃度で模擬することにより、TCR刺激強度依存性を模擬することが可能になった。このモデルを用いて、TCR刺激強度依存性、TGF-β濃度依存性を検討した。TCR刺激強度依存性では、弱い刺激強度でiTregが増加してピークを示し、その後、Th17が増加することが再現できた。また、TGF-β濃度依存性では、低濃度でTh17が増加してピークを示し、その後iTregが増加することが再現できた。その過程で、Th17のTGF-β濃度依存性を再現するためには、Foxp3で誘導され、RORγtの作用を抑制する未同定の抑制因子が必要であることがわかった。抑制因子がないとTGF-β高濃度での減少が起こらない。また、iTregの生理的な意味を検討するため、dendritic cells(DC)とnTregを加えた系の長時間の挙動を検討した。iTregはTGF-βを産生することにより免疫系に対し抑制的な働きをする。刺激によって誘導されるiTregは刺激後長時間経過したときに増加して、effectorr T cellsを抑制し、免疫系を初期状態に戻す働きがあるのではないかと考えられる。DCとnTregを加えた系でそのような挙動が起こるか検討した。その結果、IL-12を加えた系(Th1が増加する)では、刺激後1ヶ月くらいからiTregが増加し、2ヵ月後には全てのサブタイプが減少するという挙動が観察された.この結果を日本免疫学会とGIW2009で報告した。
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