研究概要 |
脳の高次機能中,視覚系に関する研究が飛躍的に進んでいる中で,聴覚系,味覚系,嗅覚系の研究は未だ不十分であり,嗅覚系に関する研究はこれからという分野である.このような状況下で,記憶系・学習理論との連携を考慮した嗅覚システムの数理モデルの構築が本研究の目的である. 本年度は主に,脳の記憶系,嗅覚系を含む脳の高次機能連携システムを学習により,以下構築した. 1.匂いや,環境情報等の入力に対し,その価値をエージェント内部で評価する,これまでにない概念である価値システムを構築し,既存の学習モデルと融合した新たな行動学習・意思決定モデルを提案し,その有効性を計算機シミュレーションにて示した. 2.匂いを含めた,環境情報等に対して,エージェントが適切な行動を学習し,その有効な経験を記憶系へ埋め込み・想起する場合,必要に応じて,埋め込んだ経験記憶のなかから,エージェントが現在遭遇している環境に対応した記憶を,効率的に,かつ,正確に取り出す必要がある.この問題を,これまでの2値情報を利用した記憶システムとしていたが,今年度はこれを多次元情報の埋め込み・連想想起へと拡張し,より実際の記憶システムに近い記憶系入出力システムを備えたエージェント構成法を開発した. 3.記憶系へ情報を記銘したのち,これを利用する場合,正確かつ,迅速に想起しなければならない.本研究では,これを注意パラメータの概念を利用し,情報の記銘・想起をこれまでの方法と比較し、より迅速かつ正確に実現する方法を提案し,エージェントの迷路脱出問題のシミュレーションにて、その有効性を示した. 4.その他,脳の記憶系自律エージェント構築に関する新たな,ロバスト学習・適応制御方式を開発し、計算機シミュレーションにより,その有効性を示した.
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