研究概要 |
本申請研究では、マルチニューロン計測手法を用いて、大脳皮質局所細胞集団が機能的モジュール構造から推定されるように特定の情報のみを表現しているのか、それとも最近の研究が示唆するように多様な情報を表現しているのか、局所細胞集団による情報表現様式を明らかにすることを目指す。 平成22年度は、1頭のマカク属サルを用いて実験を実施した。くし状に8本の電極が0.2mm間隔で配置し、各電極先端には4つの計測点を備えたマルチプローブ電極を用いて、あらかじめ用意した自然画像を含む102枚の視覚刺激に対する神経活動を下側頭葉皮質より計測した。計測信号に対してオフラインでスパイク抽出・分離を行い、単一細胞活動を得た。これらデータや昨年度収集したデータ用いて、二つの解析を実施した。これまでの研究より、刺激に関する情報は、多細胞活動パターンや単一細胞の活動時間パターンに存在する可能性が指摘されていた。そこで、両者の比較を行い、活動時間パターンよりも、多細胞活動パターンにより多くの情報が存在することを明らかにした(Kaneko et al., 2010)。また、局所細胞集団の活動を読み出すことで、多様な視覚刺激についての情報を読み出すことが可能であることを明らかにした。この成果については、現在、再々投稿中である。さらに、マルチニューロン計測手法を用いて計測した細胞活動時間パターンに関する生後発達についての論文(Kimura et al., 2010)、大脳皮質情報表現モジュールの機能構造と視覚反応形成についての論文(Okamoto et al., 2010)を発表した。この他7件の学会発表、2件の招待講演をおこなった。
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