本研究は、睡眠開始時のヒスータミン(HA)ニューロンの活動停止は視索前野(POA)の睡眠ニューロンの活動開始よりも先に起こるというこれまでの解析結果を、HAニューロンとPOAニューロンを同時に記録することで、脳波変化を基準とせず直接比較し、証明することを目指している。本年度はまずPOAの領域内にどのような睡眠ニューロンが存在し、睡眠ニューロン以外のニューロンにはどのようなものがあるかを網羅的に探索し、把握することから開始した。その結果、POAの睡眠ニューロンはこれまで示唆されていたよりも広範囲に分布し、覚醒時に特異的に発火するニューロン群も多数混在していることがあきらかになった。また、外側部のアセチルコリンニューロンの分布域では、覚醒及び逆説睡眠時にのみ低頻度で持続的な発火を示すニューロン群が見つかった。(現在アセチルコリンニューロンであることを証明する実験を行っている。)単に睡眠中枢として考えられているPOAにおいて、多数の覚醒ニューロンが示されたことは、脳内の睡眠・覚醒調節機を考える上で重要な知見となった。これらの発火パターンを詳細に解析した結果、POAの内部で覚醒ニューロン と睡眠ニューロンの両者が相互抑制し、この系が脳幹などからの修飾を受けて睡眠・覚醒を調節するモデルを提案した(Neuroscience 2009 (in press))。2箇所同時記録については、予備的な実験により方法論を確立しつつある。マルチユニット記録については、本研究課題グループ内での連携により、実際め記録を始める体制になりつつある。
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