研究課題/領域番号 |
20500289
|
研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
飛田 秀樹 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 教授 (00305525)
|
研究分担者 |
藤田 政隆 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 研究員 (10360637)
|
キーワード | 外部環境の変化 / 注意欠陥多動性障害 / モデルラット / 中脳皮質辺縁系 / オープンフィールド試験 / CART / D4R / ドパミン代謝 |
研究概要 |
本研究の目的は、動物を豊かな環境で飼育した場合(環境要因の変化)に、中脳皮質辺縁ドパミン(DA)神経系の働きの変化(不安様行動などの情動行動の変化)を、栄養因子との関連から解析することである。22年度の実施計画は、拮抗薬や栄養因子プレイオトロフィンなどの投与による行動発現の変化の解析を当初予定していたが、注意欠陥多動性(ADHD)モデル動物のSHRラット(遺伝要因)を用い環境要因の変化に対する中脳皮質辺縁DA神経系とCART(cocaine amphetamine related transcript)およびDA受容体(DAR)、脳内DA量との関係を解析した。 SHRラットを離乳後から5週間の発育期に、輪車や遊び道具を含む大ケージ中で6匹飼育(豊かな環境飼育)、通常ケージで2匹飼育(通常飼育)、通常ケージで1匹飼育(孤独飼育)の3群にわけ、オープンフィールド試験やシリンダー試験などを実施し、多動性、衝動性、社会性、不安様行動などの情動行動を評価した。その結果、豊かな環境飼育により全歩行距離(多動性指標)の減少と歩行移動時の移動速度(衝動性指標)の減少が明らかになった。また、側坐核においてDA受容体4型(D4R)およびCARTの遺伝子発現変化をreal-time PCRで認め、またマイクロダイアリシス法によりDA代謝の変化も認められた。 これらのことから、ADHDモデル動物における衝動性および多動性の情動行動は遺伝要因のみに規定されるではなく発育期の環境要因の影響も大きいこと、また外部環境の変化により中脳皮質辺縁DA系は遺伝子発現レベルおよび代謝レベルで変化が引き起こされるというエピジェネティックな変化も示された。
|