研究概要 |
本研究は、グリア細胞からの脳神経栄養因子(BDNF)放出がどのような分子機構によって制御されているのかを明らかにすることを目的としている。申請者らはこれまでに抗mature-BDNF,抗pro-BDNF抗体を、ウサギを用いて作製してきた。しかしながら、BDNFの脳内での存在量は非常にわずかであるので、定量的な解析には免疫沈降法を用いてBDNFを濃縮する必要がある。そこで本年度は抗mature-BDNF,抗pro-BDNF抗体を、マウスを用いて作製した。結果、mature-BDNF抗体については特異的にmature-BDNFを認識する4種類のハイブリドーマクローンを得ることができた。これらの抗体を用いて培養グリア細胞から放出されたBDNFをELISAおよびウエスタンブロッティング法で定量的な検出を行う。 さらに、BDNF-EGFP,BDNF-mCherry融合タンパク質を培養グリア細胞および培養グリオーマ細胞(C6)に強制発現すると、分泌小胞が細胞質内で顆粒状にラベルされることが明らかとなった。この発現系を用いると、BDNFがグリア細胞から放出される様子をリアルタイムに観察することができる。 また、本研究ではグリア細胞における分泌制御機構を解析することがひとつの特徴である。そのためグリア細胞に発現しているSNAREタンパク質によるBDNF放出制御機構も明らかにする必要がある。そこでSNAP-23-Ser95,-Ser110,-Ser120,Syntaxin4-Ser15の4つのセリン残基についてリン酸化抗体を作成した。このリン酸化抗体を用いて、グリア細胞におけるリン酸化を介したBDNFの放出制御機構について検討する。
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