研究概要 |
本年度は、培養グリア細胞やグリオーマC6細胞を、Protein kinase C(PKC)の活性化剤であるPMAで処理すると強制発現したヒト成長ホルモン(hGH)の開口放出が抑制すること、およびPMA処理は開口放出に必須なSNAREタンパク質SNAP-23のSer95,Ser120,Ser160のリン酸化を亢進し、Ser110のリン酸化を抑制するという結果についてGlia(59,143-151.2011)に報告した。 さらに本年度は前年までの研究を発展させ、SNAP-23タンパク質が培養グリア細胞やグリオーマC6細胞の開口放出機構をどのように制御しているかを明らかにすることを目的としてRNA interference(RNAi)実験を行った。まずSNAP-23に対する3種類のsiRNAを化学合成し、C6細胞にamaxa社遺伝子導入システムNucreofectorを用いて導入した。結果、1種類のsiRNAがSNAP-23タンパク質の量を30~40%程度まで減少させることを見出した。そこでそのsiRNAと同時にhGHの発現ベクターを導入し、Ca^2+イオノフォア,イオノマイシン処理によって放出されてくるhGH量をELISA法によって定量した。SNAP-23タンパク質を、siRNAを用いて減少させたC6細胞から放出されるhGHの量が減少することが期待されたが、予想に反してhGHの放出量にはほとんど変化がなかった。この結果は残った30~40%のSNAP-23タンパク質でhGHの放出には十分であるかあるいは他のSNAREタンパク質(SNAP-47,SNAP-91など)によってSNAP-23の機能が補わられているかのどちらかだと考えられる。そこで今後は他のSNAREタンパク質についてもsiRNAを作製し、発現量を減少させた場合にhGHの放出がどうなるか検討する必要がある。 またBDNFに関しては、proBDNFおよびmatureBDNFについて前年度に続いて新たなモノクローナルクローンの獲得を行った。目的としてはマウス脳においてBDNFの特異的な染色を得られる抗体の作製であったがウエスタンブロットが可能な抗体は得られるが染色できる抗体は作製できなかった。
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