本研究では、図形の大きさ(size)を区別することにより大小の概念(size concept)を形成するような認知機能に関する神経メカニズムを解明することを目的とした。開発した課題(task)では、形状は同一で大きさの異なる2つの刺激対象を提示し、大きい方、もしくは小さい方を選択させる。また、数種類の刺激対象を用いて、反復して行なう練習による、大小の概念を被験者に抽出させる。 平成21年度は、具体的に以下の研究計画を実施した。まず、大小の概念形成の課題をニホンザルに訓練した。課題の成功率をあげるために努力しながら、前頭前野の46野や9野からから神経活動の記録を用意した。課題の成功率が80%以上になってから、単一神経細胞活動の記録を行う。次に、前頭葉が損傷された患者における、脳の損傷された領域が大小の概念形成課題の遂行に与える影響を調べることを着目した。ニホンザルに訓練するときに使われた課題を人の被験者に使えるように改造しており、すでに一部分の患者に概念形成課題に遂行させ、記録された行動データ、主に概念形成の課題を実行する際のエラーのパターン、反応時間および運動時間を解析した。 今年度では、十分に訓練した動物に単一神経細胞活動の記録を行い、神経細胞活動と行動課題の関連を詳細に解析する。一方、人の被験者の集まりと分類を集中し、異なる損傷された領域が課題遂行に与える影響を詳細に解析する。動物から記録された神経活動の結果と人の被験者から集めたデータを有効に検討し、大小の概念形成に関与する脳の領域とその神経メカニズムを明らかにする。この研究の研究成果を国際学会や科学雑誌に発表する。
|