研究概要 |
本年度はヒトを含む哺乳類網膜に発現している受容体とイオンチャネルについて、パッチクランプ法、細胞内Ca^<2+>測定、そして免疫組織化学的手法を用いて解析を行った。 1.ヒト杵体視細胞においてパッチクランプ法を用いてh (HCN)チャネルを解析した。HCNチャネルは細胞膜の過分極によって活性化し、またサイクリック・ヌクレオチドにより調節を受け、心臓拍動などのリズムの形成や生体の様々な機能に重要な役割を演じていることが知られている。ヒト杵体におけるh電流は、ドーパミンやドーパミンD2アゴニストにより減少し、また光応答からの回復を遅延させた。一方、ドーパミンD1アゴニストの投与による影響は観察されなかった。そして、ドーパミンによるh電流の減少は、ドーパミンD2アンタゴニストによりブロックされた。また、サイクリックAMPの投与によりヒト杵体のh電流は増加した。以上の結果から、ドーパミンはヒト杵体のD2受容体を活性化しサイクリックAMPを減少させてh電流の減少させることによって、杵体での光応答からの回復過程を遅延させることが明らかになった。 2.スンクス(ジャコウネズミ)とスナネズミ(gerbil)網膜を用いて、発生過程および成獣における各種ヒスタミン受容体の発現と局在について免疫組織化学的に解析した。そして、それぞれの網膜神経節細胞においてH1,H2,H3ヒスタミン受容体の発現を観察した。また、Ca^<2+>イメージング解析法を用いて、スナネズミ網膜スライス標本と単離ニューロンでヒスタミンとヒスタミン・アゴニストによる細胞内Ca^<2+>の増加を観察した。特に網膜神経節細胞において著明な細胞内Ca^<2+>の増加を観察した。以上の結果から、網膜ニューロンにヒスタミン受容体が存在し、ヒスタミンが視覚において生理機能を有していることが示唆された。
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