研究概要 |
1.われわれはヒスタミンが網膜内の神経伝達物質として視覚情報処理において何らかの重要な役割を演じていると考えている。本年度は昨年度に引き続き、スンクス(ジャコウネズミ)とスナネズミ(gerbil)の網膜を用いて、発生過程および成獣における各種ヒスタミン受容体の発現と局在について免疫組織化学的に解析した。 (1)スナネズミ網膜では多くの網膜神経節細胞においてH1,H2,H3ヒスタミン受容体の発現を観察した。成長に伴ってH2,H3受容体の免疫陽性部位の減少が観察されたが、H1受容体については減少は見られなかった。成獣のアマクリン細胞に関しては、神経節細胞と比較するとH1受容体免疫陽性細胞の割合はかなり小さいが、10%程度にH1受容体陽性細胞が観察された。また、ヒスタミンの合成酵素であるヒスチジン脱炭酸酵素の免疫組織化学観察も行った。多くの神経節細胞においてヒスチジン脱炭酸酵素の免疫陽性部位が観察された。そして共焦点レーザー顕微鏡観察において、ヒスチジン脱炭酸酵素の免疫陽性部位とH1,H2,H3それぞれの受容体の陽性部位との共存(colocalization)が見られた。 (2)スンクスの網膜においてもスナネズミ網膜と同様に、多くの神経節細胞でH1,H2,H3ヒスタミン受容体の免疫陽性部位が観察された。また、ヒスタミン受容体と同様に、多くの神経細胞においてヒスチジン脱炭酸酵素の免疫陽性部位が見られた。 2.スナネズミ網膜のスライス標本と単離神経細胞について、カルシウム・イメージング法を用いてヒスタミンの効果を観察した。ヒスタミン、H1,H2,H3ヒスタミン受容体のアゴニスト、アンタゴニストを様々に組み合わせて投与し、細胞内カルシウム濃度の変化を解析した。網膜神経節細胞においてヒスタミン投与により細胞内カルシウム濃度の上昇が観察され、網膜内の神経伝達にヒスタミンが重要な機能を有していることが強く示唆された。
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