研究課題
研究代表者は、神経栄養因子である肝細胞増殖因子(HGF)の学習記憶、認知、思考などの高次脳神経機能に対する効果を解析し、アルツハイマー病の学習記憶障害に対する疾患治療への適用を目的に研究を遂行している。平成22年度は、昨年度と同様に、HGF遺伝子を神経特異的に過剰発現するマウス(HGF-Tg)に、ヒト変異タウ蛋白質の過剰発現マウス(アルツハイマー病モデルマウス)を交配してダブル過剰発現マウスを作製して、1)アルツハイマー病の学習記憶障害に対するHGFの改善効果を電気生理学的・行動学的手法(研究代表者・分担者)により、2)アルツハイマー病に対するHGFの神経保護作用・治療効果の分子作用メカニズム(アポトーシス、オートファジー、グリア細胞活性化、凝集体形成などに対する効果)を生化学的・組織学的手法(研究代表者、分担者、連携研究者)により解析中である。また、プロモデオキシウリジンを用いた細胞増殖活性を解析し、HGFは神経細胞死を抑制する神経保護作用だけでなく、神経新生を促す可能性を解析中である。これらの解析が全て終了した時点で、解析結果を総合的に評価し、アルツハイマー病の学習記憶障害に対するHGFの治療効果、および、その分子作用メカニズムを評価する。さらに、実験室レベルから臨床適用へ移行することを考慮し、1回投与で有効なHGFのウイルスベクターを用いた遺伝子導入法を遂行中で、現在、既に構築済のベクター(神経特異的に感染する単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス)の大量調製、ベクターの選択、投与を開始している。アルツハイマー病に対するHGFの改善(治療)効果が明らかになれば、HGFがアルツハイマー病に対して根本的な治療薬となる可能性があり、とても意義のあるものである。
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Neuroscience Letters
巻: 489(1) ページ: 25-29