パーキンソン病(PD)の病理形成において、過剰リン酸化したα-synucleinが関与していると考えられている。しかし、リン酸化したα-synucleinの生理機能に関しては未だ確立していない。ドーパミン神経細胞株MN9Dに野生型α-synucleinと擬リン酸化α-synucleinを導入発現させ、ドーパミン生合成律速酵素であるチロシン水酸化酵素(TH)を検討したところ、TH自身の発現には影響は観られなかった。しかし、野生型α-synucleinを発現させた場合は明らかにTHのSer40のリン酸化とドーパミン生合成が抑制された。一方、S129D擬リン酸化α-synucleinを発現させた場合はTHのリン酸化が促進され、ドーパミン生合成も促進された。さらに、野生型α-synucleinの過剰発現はMN9Dへの細胞毒性として現れたが、擬リン酸化α-synucleinを発現させた場合には細胞毒性は観られなかった。これらから、Ser129がリン酸化されたα-synucleinの機能の一つとして、THの活性制御に関わる可能性と細胞毒性を抑制する可能性が示唆された。
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