Parkinson病の病理形成に関与するαシヌクレインはミトコンドリアに蓄積し、その機能に障害を与える事が知られている。我々はAdeno Associated Virus発現系を用いてラット脳の黒質にαシヌクレインを発現させたところ、24週後にはチロシン水酸化酵素(TH)陽性ニューロンほぼ半減した。さらに、ミトコンドリアの形態にも異常を来し、ミトコンドリア膜電位(ΔΨm)は減極していた。免疫沈降実験と共焦点顕微鏡観察から、αシヌクレインはadenylate translocator(ANT)と結合している事が示された。ANTの阻害剤であるbongkrekic acid(BKA)がΔΨmの減極を部分的に無効にする事からも、αシヌクレインがANTと結合する事によってΔΨmの減極を促進する事が示唆された。これらの現象に加えて、ミトコンドリアマトリックスのapoptosis-inducing factor(AIF)の減少が観られた事から、AIFが細胞質に放出された可能性が示唆された。 これらの結果から、黒質のドーパミン作動性ニューロンにおいてαシヌクレインの過剰発現は、ミトコンドリア内のANTと結合する事によりミトコンドリアの障害をもたらし、ミトコンドリア依存性の細胞死の経路を引き起こす可能性が示唆された。このミトコンドリアの機能異常が、Parkinson病におけるドーパミン作動性ニューロンの損傷と死に繋がっている可能性がある。
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