シナプスの可塑性は"電気活動の履歴"が"蛋白質と構造の変化"として記憶される現象である。このシナプスを構成する蛋白質分子は自身の輸送と結合等の特質により自立的に集積、解離するが、この"記憶"に伴う、分子の挙動は不明である。シナプスには多種の蛋白質分子があるが、本研究ではシナプス可塑性の発現に重要な役割をもつリン酸化酵素(CaM K II、PKC、PKA)に注目する。今年度は、シナプスにおいて代表的なリン酸化酵素であるCa MK IIに光活性化GFP、光スイッチインク可能なタンパク質Dronpa、また、光にて色変換可能タンパク質Dendra2とのキメラタンパク質を作成し、神経細胞での発現、光標識の条件を検討するとともに、光学的分解能の確認調整を行った。2光子吸収によって限られた領域にあるタンパク質を光標識できることを確認し、また、これらの蛍光タンパク質の中で、2光子吸収での光標識が困難な標識タンパク質も判明した。もう一つの課題である任意のシナプス終末の刺激方法として、Channe1Rhodpsin2をもちいた方法を検討した。光刺激用に長波長(800nm程度)とイメージング用に488nm。543nm、さらにChanne1Rhodpsin2の刺激用に477nmの光を導入し、制御する系の構築を行った。未だ簡便に研究をすすめるシステムの構築に至っていないが、実現可能であることを明らかにした。次年度からは、単一シナプス前終末の光活性化の有無とそれに伴うシナプス後細胞におけるリン酸化酵素の動態の関係を明らかにしていく。
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