研究概要 |
嗅覚一次中枢嗅球の糸球体は機能的ユニットと考えられ、嗅覚情報処理において極めて重要であると考えられている。本研究では以下の3点を明らかとした。(1)我々が提唱しているtype 1 PG cell、 type 2 PG cell における軸索の有無の検討を軸索初節部のマーカーであるankyrinG、Na チャネル、βIV-spectrinの局在により検討した。その結果、糸球体近傍におけるニューロン群tyrosine hydroxylase(TH)、calbindin, calretinin, NOS陽性ニューロンで軸索初節部が認められたのは大型のTH陽性ニューロン、明らかにtufted cell と考えられる大型のNOS陽性ニューロン及び従来short-axon cellsと呼ばれてきた大型のPV, calbindin陽性ニューロンであった。所謂PG cellsと考えられるニューロンの大部分では軸索初節部が認められなかった。このことは、granule cellsとの違いとされてきたPG cellsの特徴である軸索の存在が必ずしも当てはまらないことを示唆していた。(2)糸球体近傍TH陽性GABAニューロンの発生時期、成体でのニューロン新生をBrdUを胎生期(E13、E17)、新生時期(P3)、成体(P4w, 8w)の様々な時期に投与して検討した。胎生期、新生時期にBrdU 投与したグループでは小型TH 陽性ニューロンと大型TH 陽性ニューロンが標識され、細胞体のサイズの分布は正規分布せず、2つの正規分布を合成することで説明出来た。P4w 及びP8w にBrdU 投与したグループでは小型TH陽性ニューロンのみの標識であり、細胞体のサイズの分布は正規分布した。これらのことから、成体で新生しているTH陽性ニューロンは小型のものであり、嗅球糸球体間結合を担う大型TH陽性ニューロンはこのグループとは異なると考えられる結論を得た。(3)無軸索ニューロンである外網状層PV 陽性ニューロンの樹状突起にankyrinGがパッチ状に集積し、まさにその部位にNaチャネルやβIV-spectrinが局在していた。また、電子顕微鏡によりこのEPLのPV陽性ニューロンの樹状突起のパッチ状の特殊な部位は軸索初節部及びランビエ絞輪に特異的とされている形質膜の裏打ち構造membrane undercoating を有していることが明らかとなった。従って、この樹状突起の特殊な部位は分子構成的にも微細構造的にも軸索初節部及びランビエ絞輪に類似しており、スパイク発生部位"hot spots"である可能性が示唆された。
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