ニューロンの樹状突起の形成と維持は、脳機能の発達と維持に重要である。ニューロンの樹状突起内には、通常の細胞にはあまり見られないような、中心体にアンカーされておらず極性の異なる微小管が含まれていることが知られており、その存在が樹状突起の形成に重要であると考えられている。しかし、その形成機構はよく分かっていない。これまでの我々の研究によって、通常の細胞では中心体に存在する微小管アンカータンパク、ニナインが、神経細胞では中心体から遊離して樹状突起に移行することが明らかになった。 そこで本研究では、神経細胞におけるニナインの中心体結合ドメインの解析を行った。ニナインには中心体結合ドメインが3か所知られている。これらの中心体結合ドメインを神経系株細胞Neuro2A(この細胞ではニナインは中心体に結合している)に発現させたところ、どれも中心体に結合することが確認された。次に、それらを分化の進んだ初代培養大脳皮質ニューロン(この細胞ではニナインは中心体から遊離している)で発現させたところ、3つのドメインのうち、2つは中心体への結合が非常に弱かったが、最もC端に近いドメインはニューロンでも中心体に強く結合した。このことは、ニナイン分子には、ニューロンにおいて中心体から遊離するために必要な配列が存在することを示している。ドメイン解析をさらに進めることによって、神経細胞の中心体の特異性が明らかになると考えられる。
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