我々はGnRHニューロンの制御に関して近年注目を集めるkisspeptinに対する抗体を作製して、kisspeptin神経の視床下部における神経線維の分布から、その生理作用に関して解析を進めた。Kisspeptin神経線維は視床下部内の背側弓状核に密な分布が認められた。この領域は下垂体からのプロラクチン分泌を制御するDopamineニューロンが分布する(TIDA neuron)。二重蛍光免疫組織化学によりKisspeptin神経線維はTIDA neuronとの密な接触が多く観察された。さらにSynaptphysin(シナプス構成タンパク)/Tyrosin hydroxylase(Dopamine産生律速酵素)/kisspeptin三重蛍光染色でも3種の輝点は一致が観察された。免疫電子顕微鏡観察では、TIDA neuronの細胞体、樹状突起にkisspeptin神経線維との間にシナプス構造をを見出した。これらの結果はkisspeptin神経からTIDA neuronにシナプスを介した連絡があることを示している。生理学的な応答として、視床下部分散培養系におけるTIDA neuronはkisspeptinに応答した細胞内カルシウムの上昇を見出した。以上の結果はkisspeptinによるDopamine neuronを介したプロラクチン分泌の制御を強く示唆している。更にはプロラクチンの脳内への浸潤によるGnRHニューロンを含めた神経内分泌制御の可能性が期待できる。
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