研究課題
H20年度の研究実施計画は、1)シナプス前終末に存在するグルタミン酸受容体の存在をレプリカ標識法で明らかにする、2)レプリカ標識法の試料作製条件の検討であった。まず、シナプス前受容体の存在を検討するために、海馬CA3領域、線条体核、台形体核を用いて、AMPA型、NMDA型のグルタミン酸受容体についてレプリカ標識、観察を行った。シナプス前膜上には、非常に低い密度で金粒子の反応が認められ、その受容体数は電気生理学の実験結果から計算される受容体数とほぼ等しかった。しかし、シナプス前膜では、後膜受容体のような膜タンパク分子の凝集といった特徴的な構造は観察されず、金粒子の反応が真の標識であるという確証が得られなかった。一方、この実験の過程で、台形体核に存在するCalyx of Heldシナプスのグルタミン酸受容体を対象にレプリカ法を用いることで、成熟に伴うシナプスの形態形成についての新規知見が得られた。すなわち、細胞膜を2次元で解析できる本手法により、受容体タンパクの凝集と形状の変化、また、それらの受容体クラスター内でのAMPA、NMDA各受容体の局在、配分の変化を可視化した(顕微鏡学会にて発表)。さらに、双面レプリカ法を応用することで、より詳細に受容体クラスターの形態形成を解析できるようになった。また、計画(2)として挙げた、試料作製法の条件検討について、凍結割断の割断温度、蒸着するカーボン・プラチナの量を検討し、これまでの通常法では観察が困難であった膜内タンパク粒子の微細形態がより正確に観察できるようになった。本研究で検討した実験条件をもとに、長年議論されてきた、網膜における電気的シナプスの構成タンパクについて、チャネルを形成する二つの細胞が2種類のタンパクを発現し、同じタンパク種同士で結合していることを初めて明らかにし報文として報告した。
すべて 2008
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The Journal of Neuroscience 28
ページ: 9769-9789