研究概要 |
本研究は、ポリグルタミン患者各組織でのL-plastin量の変化を明らかとし、本蛋白質の増加と病態の重症度との相関を明らかとすることを目的とする。実際の患者においてこの現象の普遍性を確認するために、歯状核-赤核・淡蒼球-ルイ体萎縮症(DRPLA)およびハンチントン舞踏病(HD)患者において検討を加え、それら疾患群の大脳皮質,小脳でL-plastinの量が明らかに増加していることを見いだした。しかし、Machado-Joseph病(MJD)の大脳では増加を認めていない。より侵襲の少ない臓器による検査を試みるため、肝臓、腎臓におけるL-plastinの増大の有無を検討した。剖検時凍結組織(肝臓、腎臓)ではWestern blotting上、ポリグルタミン病患者ではやや発現が増加している傾向があった。これらの組織は中枢神経系に比べて比較的侵襲が小さく採取できることから、ポリグルタミン鎖依存性のL-plastin増加が認められれば治療効果予測マーカーとなる。ポリグルタミン病は時間依存性に不溶蛋白が細胞質や核内に蓄積して発症することが考えられている。このことを検証するため、数週間低量の増大ポリグルタミン鎖を発現させ続けた状態での,L-plastinの蓄積を検討した。増大ポリグルタミン鎖発現細胞系を用いた実験では,L-plastinは初期には蓄積せず,数週間の経過で細胞内に蓄積していくことを観察した。これはポリグルタミン病を発症するまでにある一定以上の時間を必要とするという現象に、L-プラスチンが関わっている可能性を示すものと考えられる。増大ポリグルタミン鎖の発現によりL-plastinが増加するモデル細胞系を用い、既に効果が言われている種々の薬剤において、L-plastinの発現量の変化を検討したが、現在のところ優位に発現量の低下をみたものはない。
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