ブルーリ潰瘍は、熱帯、亜熱帯地域の難治性皮膚疾患であり、大きく深い無痛性の皮膚潰瘍が形成される。我々はM.ulcerans感染マウスでは末梢神経内への抗酸菌の侵入と病変部の知覚低下があること、神経病変が菌の産生するmycolactoneによることを見い出した。ブルーリ潰瘍における病変の発症機序がわかれば悲惨な後遺症を防ぐことができ、国際貢献につながる。 本年度は、化学療法の効果について検討した。BALB/cマウスにM.ulceransを接種して、Rifalazil5mg/kg/day投与前後の組織像を経時的に比較したところ、治療開始後1週間までは組織壊死と間質の浮腫が残存したが、3週後から15週後にかけて徐々に菌がマクロファージに取り込まれ、類上皮細胞が出現して病変は消退した。また、ガーナのブルーリ潰瘍7症例について、抗菌薬(RFP+SM)治療前後の皮膚組織の炎症パターンを検索したところ、治療前では壊死と軽度の急性炎症が認められた。治療開始後6週間では類上皮細胞、多核巨細胞、Tリンパ球、Bリンパ球が出現した。これらの結果から、化学療法によって菌が変性・死滅すると類上皮細胞肉芽腫が形成されることがわかった。
|