高齢化社会を迎え、パーキンソン病(PD)の治療法の開発が強く待望されている。そこで、本研究では、私たちが発見した新しいチロシン水酸化酵素(TH)の機能発現の制御因子として働くV-1に着目して、それによるTHの機能発現の新しい制御機構の解明と本タンパク質の生理機能に関する新しいアイデアを基盤とするPDの治療法の開発を目指す。 本年度は、notchシグナリングにおいてnotchリガンドとして機能し中脳黒質ドパミン神経細胞や脂肪細胞の分化制御因子として働くことが報告されている細胞膜結合理および分泌型のdelta-like protein 1(dlk1)/pref1の遺伝子発現制御にV-1が関与することを、in vitroのカテコラミン産生細胞系であるラット副腎褐色細胞腫由来のPC12D細胞でV-1、CapZβ、およびPref-1/DLK1の各siRNAで処置してノックダウン実験を行い、新たに発見した。すなわち、(1)V-1がその結合タンパク質のF-アクチン結合タンパク質CapZαβと協同でTHタンパク質の発現を促進性に調節すること、(2)PC12D細胞でV-1がdlk1/pref1の遺伝子発現を促進性に調節し、しかもdlk1/pref1分子がTHの遺伝子発現の正の調節因子と機能することを突き止めた。(3)生細胞でV-1がCapZαβに結合し、CapZαβのキャッピング活性を抑制することによりアクチンの重合を実際に促進することを捉えることに成功した。
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