研究課題
申請者が近年発見した、小脳皮質平行線維-プルキンエ細胞におけるシナプス可塑性、長期増強(long-term potentiation ; LTP)には、一酸化窒素(nitric oxide ; NO)シグナルと、Caシグナルの両者が必要であることが示されていた。そこで、本年度はNOシグナルとCaシグナルのクロストーク、および平行線維LTP(PF-LTP)へめ関与の解明を目的として研究を行った。小脳プルキンエ細胞においては、NO供与体の投与により、細胞内Ca濃度の上昇が見られた。NOシグナルの伝達系として、可溶性グアニル酸シクラーゼ(soluble guanylyl cyclase ; sGC)依存的な経路と、タンパク質のS-ニトロシル化依存的な経路があるが、このNO依存的なCa上昇は、sGCの特異的阻害薬ODQで阻害されないことから、S-ニトロシル化依存的であると考えられる。また、NO依存的Ca上昇はCaを含まない細胞外液下でも見られることから、細胞外からのCa流入には依存しないと考えられる一方、細胞内Caストアの阻害薬、および或る種のCa放出チャネルの阻害薬で阻害されたことから、細胞内ストアからのCa放出によるものであることが示された。そこで我々は、このNOシグナルによるCa放出現象をNO-induced Ca release (NICR;一酸化窒素依存的Ca放出)と名付けた。引き続き、NICRの機能的役割を明らかにするため、NICRを阻害する薬物の小脳LTPへの影響を調べたところ、全ての薬物に阻害効果が認められた。また、NICRはLTP誘導刺激により誘導されたが、神経型NO合成酵素欠損マウスにおいては阻害された。したがって、NICRは神経活動依存的依存的に内因性のNO合成酵素の作用を介して誘起される細胞内Ca動因機構で、シナプス可塑性の誘導に必要であることが明らかとなった。
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Neurobiology of Aging
巻: (印刷中)
Biochemistry
生体の科学
巻: 61 ページ: 386-387