我々は既に、APPの細胞内ドメイン(AICD)の発現を脳特異的にコントロールできるトランスジェニックマウス(Tg)を作製した。しかしながら、このTgはAICD発現量が低かったために、新しいプロモーターを用いて再度Tgを作成中である。今後、このTgを用いて、組織学的・病理学的にAICDが発現している部位で細胞死が起こっていないかを検討する。細胞死が起こっていた場合、アポトーシスによるものかどうかTUNEL法を用いて調べる。また、脳からDNAを抽出して電気泳動し、細胞死に伴ってDNAラダーが検出できるかを調べる 現在までの結果から、AICDは核内で特定の遺伝子の発現を調節しており、その結果として神経細胞死が起こっていると考えられる。その原因を検討するために、AICDを発現しているP19細胞と発現していない細胞からRNAを抽出し、DNAマイクロアレーを用いて約4万遺伝子の発現を比較した。その結果、極めて多くの遺伝子の発現が変化している事が明らかになった。例えば、200以上の遺伝子の発現が10倍以上に増強され、300以上の遺伝子の発現が1/10以下に抑制されていた。現在、このデーターを基にクラスタイング解析をおこない、発現パターンにより任意に発現量が変化している遺伝子を分類している。今後、さらに各グループにおいてパスウエー解析をおこない、発現が変動している遺伝子がどのようなパスウエーに関係しているのかを明らかにする予定である。
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