●ジブチリルcAMP刺激によるPC12細胞の神経突起伸展についての解析:膜透過性のcAMPアナログであるジブチリルcAMPの刺激は、PC12細胞の神経突起伸展を誘導できる。その時の初期突起形成には、NGFで刺激した時と同様にRac1/Cdc42が関与すると考えられるので、それらの活性化の様子をFRETイメージングで可視化した結果、ジブチリルcAMP刺激により、Rac1が持続的に活性化される一方でPIP3のレベルに変化がないことがわかった。Cdc42の活性はジブチリルcAMP添加により低下する。Rac1活性化は主にPKAを介していると推定しており、検証中である。次に、ジブチリルcAMPによる突起伸展をタイムラプス観察したところ、NGF刺激の場合に比べて突起先端部の出入りが少なく、比較的単調に伸びていくことがわかった。Rac1の単調な活性化と突起伸展の単調さの間に何らかの因果関係が想定される。平成21年度以降は、RNA干渉法を使うことで、これらの過程でRac1を活性化する因子を同定する。また、その因子とPKAの関係を明らかにすることを目指す。またもうひとつのポイントは、当初は広範に起こる活性化がジブチリルcAMP刺激1時間頃を境に突起先端部に局所化するメカニズムの解析である。ジブチリルcAMP処理では、NGF刺激と異なり、PIP3の局所的な集積は見られないので、NGF刺激の場合のようなポジティブフィードバック(Rac1→PI3キナーゼ→Rac1)による局所化のモデルでは説明できない。PKAのFRETバイオセンサーを使用するなどして、その局所化のメカニズムを解析することを目指す。●成長円錐ガイダンスのFRETイメージング系の構築:理化学研究所・上口裕之研究室より、ガイダンス因子の勾配による成長円錐の方向転換の系を導入した。
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