研究概要 |
内在性ニコチン受容体モジュレーターSLURP-1およびSURP-2の発現部位と生理機能を解析する目的で,それぞれに対する抗体の作製と活性を保持した組み換えタンパク質の作製を試みた.SLURP-1については,免疫電顕を含む組織学的解析に応用可能な質の高い抗体を得ることができたが,SLURP-2に対する抗体は未だに満足できるものは得られていない.一方,ヒト免疫グロブリンFcとの融合タンパク質として生物活性をもつSLURP-2の組み換えタンパク質(SLURP-2-Fc)の作製に成功したが,同様な方法で作製したSLURP-1-Fcについては,明らかな活性を確認できる標品は得られていない.この様な技術的障壁はあるものの,我々のこれまでの研究から,SLURP-1およびSLURP-2がニコチン作用の内在性修飾因子として生体機能調節に関与する証拠が得られた.SLURP-1の作用を模した低分子薬物を開発することができれば,生体内のα7 nAChRを介する作用を特異的に強め,なおかつニコチン誘導体に認められる副作用を軽減させた,全く新しいタイプの薬剤が生まれる可能性がある.また,病変部で発生している過剰な炎症反応に対して,SLURP-2が生体防御機構の一端を担っている可能性が示唆された.SLURP-2が結合する受容体の同定や,その情報伝達機構の解明などは今後に残された重要な検討課題であるが,SLURP-2も新たな創薬シーズとなる可能性が浮かび上がってきている.これらの知見に基づき,今後はヒトSLURP-1およびSLURP-2のELISA系を確立して各種疾患におけるSLURP-1/SLURP-2の動態を解析し,ヒトでの病態生理への関与および疾患バイオマーカーとしての有用性を検討したいと考えている.
|