研究概要 |
免疫担当細胞である樹状細胞が神経幹(前駆)細胞を増殖させることより、樹状細胞が分泌する未知因子がその効果を担うことがこれまでのデータより示唆されている。今回、我々は分子生物学的な手法を駆使して、樹状細胞由来神経幹(前駆)細胞増殖因子として、MIF(macrophage migration inhibitory factor)を同定した。また、マウス線条体より培養したニューロスフェアにおいて、MIFレセプターであるCD74/CD44共陽性細胞の存在を確認した。この系を用いて、MIFの神経幹(前駆)細胞に及ぼす効果をin vitroにおいて解析した結果、MIF添加により、有意に神経幹(前駆)細胞の増殖能が亢進された。さらに、MIF添加により、プライマリーおよびセカンダリーニューロスファア形成能が亢進することも明らかとなった。これらの効果は、MIF阻害剤(ISO-1)やMIF中和抗体、レトロウィルスで発現させたRNAi等により逆に阻害されることを明らかにした。さらに、MIFそのものが神経幹(前駆)細胞より分泌されていることを、ELISA法により明らかにした。これらの知見により、MIFがin vitroにおいて神経幹(前駆)細胞を自律的に、生存維持させているために機能していることが示唆された。一方で、MIFレセプターであるCD74がマウス胎児終脳・脳室周囲といった神経幹細胞存在部位に発現しているとも明らかとなり、生体内においてもMIFが機能していることが示唆された。新たに、MIFの神経(前駆)細胞に対する効果を担う分子メカニズムとして、Akt, Stat3といった既知の神経(前駆)細胞生存維持シグナルの関与が明らかとなってきている。今後、in vivoにおいてMIFが神経幹細胞に果たす役割を解明する予定である。
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