1. 顆粒供給における細胞骨格系蛋白質の役割 開口頻度の持続性、ならびに顆粒運動と顆粒の分布が、形質膜直下に局在する顆粒の立体的分布と密接に関わることをこれまで明らかにしている。本年度の研究では、一個の細胞を直径100%の球体ととらえて、細胞全体を外層(形質膜側)30%、中間層30%、および中心層40%の3層に分け、それぞれの範囲にある顆粒数が開口分泌の前後でどのように変化するかを解析した。その結果、刺激前、刺激中、刺激後で各層に分布する顆粒数に大きな相違はないが、TPA処理によって顆粒供給を高めると、3層間の顆粒の移動が高まり、形質膜直下の外層で刺激前では約12%、刺激中では約6%の顆粒数の増加が見られ、MB処理細胞では、刺激後に約5%の顆粒数の減少が見られた。総顆粒数の解析から、この変化は総顆粒数自体の変化ではなく、顆粒そのものの動きの変化を反映していることが示唆された。。我々はこれまでに、Metamorphシステムによる解析から、形質膜直下の空間に分布する顆粒数が、TPAで顆粒供給を高めると、約15%増加することを明らかにしており、今回の結果は良く一致する。 2. SNARE蛋白質を補完する蛋白質の役割 昨年に引き続いて、CAMK II結合能を欠損するR151G Syntaxin 1Aノック・インマウス由来のクロマフィン細胞について、アンペロメトリー法による開口イヴェントの測定解析を進めた結果、CAMK IIとシンタキシンの結合障害がAChによる開口確率を低下させること、およびその低下は「放出可能プール」の大きさの減少に由来する可能性が示唆された。さらに、個々の開口イヴェントのキネティクス解析から、この障害は開口確率を低下させるほかに、膜融合プロセスのキネティクスにも影響を及ぼすと示唆された。
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