研究概要 |
15d-Δ^<12,14>-PGJ_2は官能基としてカルボキシル基を有し生体内pHでは負電荷を帯びているにも拘わらず、定説ではステロイドと同様に濃度勾配に沿って細胞外から細胞質へと膜透過すると信じられてきた。我々は、細胞膜上に15d-Δ^<12,14>-PGJ_2特異的結合部位を検出した。本課題において、15d-Δ^<12,14>-PGJ_2膜標的分子候補として13個のタンパク質を同定した。その中には、15d-Δ^<12,14>-PGJ_2を細胞外から内へと輸送しうるアニオンチャンネルも含まれており、定説に一石を投じうる点に本研究の独創性を示すことができた。これまで、15d-Δ^<12,14>-PGJ_2による細胞死にかかわる因子として、カルシウムやカスパーゼが報告されてきた。本課題において、それら以外にアポトーシスに関与しうる15d-Δ^<12,14>-PGJ_2膜標的タンパク質を得た。15d-Δ^<12,14>-PGJ_2はReactive Oxygen Species(ROS)を産生していることが報告されている。本課題において同定された、細胞骨格・解糖系酵素・分子シャペロンに分類される15d-Δ^<12,14>-PGJ_2膜標的タンパク質は、単独ではROS産生能を有しないが、これらが組み合わさりクラスターを形成することでROS産生能を示しうる可能性を見出した。15d-Δ^<12,14>-PGJ_2を含むcyclopentenone代謝物は、神経変性疾患メディエイターとして認知されている。本課題において見出された15d-Δ^<12,14>-PGJ_2膜標的タンパク質は神経変性疾患に関与する新規標的分子の発見のみならず、発症機序の解明および新規治療薬のターゲット発見に繋がる。
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