研究概要 |
本課題において、15d-Δ^<12,14>-PGJ_2膜標的分子候補として3種の解糖系酵素(Enolase2, pyruvate kinase M1(PKM1)およびglyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase(GAPDH),2種の分子シャペロン(heat shock protein 8およびT-complex protein 1 subunitα),4種の細胞骨格タンパク質(Actin β, F-actin-capping protein, Tubulin βおよびInternexinα)を同定した。その成果は、特許出願され、平成22年度日本神経科学大会にて発表され、平成23年3月PlosOneにて出版された。解糖系酵素は細胞質に局在していることが知られているが、近年、細胞膜上にも存在し細胞死への関与が示唆されている。我々は、解糖系酵素の一つに着目し、その抗体を用いて、神経細胞表面に存在していることを確認し、15d-Δ^<12,14>-PGJ_2誘発神経細胞死を模倣しうることを突き止めたので、平成23年度日本神経科学大会にて発表予定である。これまで、15d-Δ^<12,14>-PGJ_2による細胞死にかかわる因子として、カルシウムやカスパーゼが報告されてきた。それら以外にp38MAPK経路の関与を示唆する結果を得たので、その役割について平成23年3月日本薬学会にて発表した。15d-Δ^<12,14>-PGJ_2はReactive Oxygen Species(ROS)を産生していることが報告されている。本課題において同定された、細胞骨格・解糖系酵素・分子シャペロンに分類される15d-Δ^<12,14>-PGJ_2膜標的タンパク質は、単独ではROS産生能を有しないが、これらが組み合わさりクラスターを形成することでROS産生に関与しうる可能性を見出した。15d-Δ^<12,14>-PGJ_2を含むcyclopentenone代謝物は、神経変性疾患メディエイターとして認知されている。本課題において見出された15d-Δ^<12,14>-PGJ_2膜標的タンパク質は神経変性疾患に関与する新規標的分子の発見のみならず、発症機序の解明および新規治療薬のターゲット発見に繋がる。
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