研究概要 |
PKNは、1994年に神戸大学・小野功貴研究室の向井秀幸准教授らによって見いだされたセリン・スレオニン蛋白キナーゼで、脂肪酸や低分子量GTP結合タンパク質Rhoにより活性化される(詳細はMukai,J Biochem.2003参照)。中枢神経系にも広く分布しているが、その機能は不明である。そこで向井准教授らが作成したPKN1aノックアウト(KO)マウスを用いて、シナプス伝達やシナプス可塑性におけるPKNの役割を検討することにした。本年度は主に海馬スライスを用いてPKN機能の解析を行った。PKN1a KOマウスにおいてはCA1領域におけるシナプス伝達は、野生型とKOマウス間で差は見られなかった。シナプス可塑性については、長期増強は野生型と差はなく保たれていたが、別のシナプスに野生型では見られない異シナプス性長期抑圧が誘発された。この異シナプス性長期抑圧は、生後約2週のマウスで見られるホモシナプス性長期抑圧にも付随して誘発され、(1)新規開発されたPKN阻害剤をシナプス後細胞に注入すると誘発されなくなるので、PKNはシナプス後部で作用している、(2)内因性カンナビノイド依存性異シナプヌ性長期抑圧とほ異なり、シチープス後性の発現を示す、(3)シナプス後細胞にエンドサイトーシス阻害剤注入すると発現しなくなることを見いだした。 よってPKNはPI3キナーゼと同様に(Daw et al.,Nature Neurosci.,2002)、シナプス抑圧が活動のないシナプスにまで広がるのをシナプス後部で防いでいることが示唆された。
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