研究課題
ホ乳類の感覚皮質には、発達期の一時期に入力依存性にシナプスの伝達効率を変え得る臨界期が存在し、遺伝的な枠組みの中で形成された神経回路は、臨界期中の神経活動に従ってさらに精緻に仕上げられていくことが知られている。このような可塑性発現のメカニズムは、学習や記憶の素過程と多くを共有していると考えられており、その解明は社会的にも大きな期待が寄せられているが、未だに不明な点が多い。本研究では、感覚遮断に伴う受容野変化の基盤となっているシナプス結合の変化を、回路内の結合種ごとに明確にすることを目的としている。これまでに、バレル皮質においては感覚遮断に伴う受容野の変化は生後14日以降に始まること、またこれは皮質4層-2/3層間のシナプス結合の変化によって担われている可能性があること、さらにこのシナプス結合はシナプス前細胞と後細胞の発火タイミングによって可塑性の方向が決まる、スパイクタイミング依存性があること、また抑制性細胞が関与している可能性があることなどが示唆されてきた。今回、4層-2/3層間シナプスにおいて、これまで報告されていない新たなタイプのスパイクタイミング依存性可塑性(STDP)が、生後7日から生後14日以前に存在することを発見した。以前報告したように、この時期には4層の抑制性細胞が、視床からの活動により4層、2/3層細胞の発火タイミングを制御することが出来ない。しかしながら、この時期は4層細胞が2/3層へ軸索投射を延ばす時期である。新たなSTDPは、発火制御なしに4層細胞が2/3層へシナプスするのに好都合な可塑性と考えられる。
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Journal of Physiology
巻: 588 ページ: 2769-2787
Frontiers in Neuroanatomy