脳内の神経回路網の形成、機能発達において神経活動は重要な役割を持つと考えられている.また神経活動パターンは睡眠・覚醒状態により強くコントロールされていることが知られている.しかし回路網が変化する過程における生体脳で実際にどのような神経活動パターンが生じて回路網に変化がおきているのかは明らかになっていない.これらをふまえ本研究は行動マウス視覚野の神経細胞活動と睡眠・覚醒に焦点をあて視覚野可塑性をモデルとして解析している. 実験的にはマウス視覚野に複数のテトロード電極を埋め込み、脳波とともに局所領域から複数の細胞からの神経活動を分離・同定した.行動中のマウスに時間制御されたLEDで光刺激を与え神経細胞の睡眠/覚醒状態依存性、視覚応答性や神経細胞間の機能的結合を解析した.眼優位可塑性を回復させることができる抑制系神経伝達に影響する薬物投与実験と組み合わせ、睡眠時のシナプス結合の強化が可塑性に関与するという知見を得ている. 本年度においても同一細胞群の神経活動を長時間(2週間以上)慢性記録し追跡・解析することを主眼とし統計的解析に十分な実験を蓄積させることができた.これに加え興奮性と抑制性細胞では睡眠時のシナプス結合の強化が異なることを見出した。さらにNMDA受容体機能が関与することも示され、睡眠による機能的結合促進の分子メカニズムを理解する手掛かりを得た.現在、長期的な視覚経験の変化がどのように視覚回路網の変化をもたらしているのかを解析している。
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