研究概要 |
成体の筋肉組織には高い再生能力があり,損傷を受けても修復が可能である。その筋再生を担っているのは,サテライト(筋衛星)細胞とよばれる幹細胞である。しかし,サテライト細胞が幹細胞として維持される仕組み,休止状態から活性化状態への制御メカニズムや筋再生に至るまでの筋分化の分子メカニズムなど多くの点が,不明なまま残されている。今までの研究により,申請者らは、サテライト細胞において,ジストロフィンアイソフォームの一つであるDp71および移動性筋芽細胞で発現するホメオボックス遺伝子Lbx1,さらに動物の発生において多彩な機能をもつNotch3がサテライト細胞で発現していることを発見し,筋再生におけるそれぞれの遺伝子の機能について研究を行ってきた。本研究では,それぞれの遺伝子のノックアウトマウス,具体的には,1)すべてのジストロフィンアイソフォームが欠失したDMD-nullマウス,コンディショナルLbxlノックアウトマウスおよびNotch3ノックアウトマウスを用いて,筋再生過程におけるサテライト細胞の動態を免疫組織化学的手法などを用いて解析するとともに,これらのマウスから単離したサテライト細胞の増殖や分化能について詳細に研究する予定であり,これらの研究により,筋再生の分子メカニズムを解明することを目標としている。これらの研究により,筋ジストロフィーなど遺伝性筋疾患の幹細胞治療に有用な情報が得られることが期待される。
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