研究概要 |
成体の筋肉組織には高い再生能力があり,損傷を受けても修復が可能である。その筋再生を担っているのは,サテライト(筋衛星)細胞とよばれる幹細胞である。しかし,サテライト細胞が幹細胞として維持される仕組み,休止状態から活性化状態への制御メカニズムや筋再生に至るまでの筋分化の分子メカニズムなど多くの点が,不明なまま残されている。今までの研究により,申請者らは、ジストロフィンアイソフォームの一つであるDp71および移動性筋芽細胞で発現することが知られていたホメオボックス遺伝子であるLbx1,さらに動物の発生において多彩な機能をもつNotch3のいずれもがサテライト細胞で発現していることを発見した。本研究は、これらの遺伝子のノックアウトマウスを解析することにより,筋再生の分子メカニズムを解明することを目標としている。Notch3ノックアウトマウスの解析により,Notch3がサテライト細胞の増殖および自己再生に抑制的に作用していることを明らかにした。この結果は,Notch3がNotch1に拮抗的作用していることを示唆するものである(Stem Cells,2010)。一方,Lbx1ノックアウトマウスは出生直後に致死となることから,Lbx1コンディショナルノックアウトマウスを作成し(Genesis,inpress),成体における機能について現在解析を進めている。また,Dp71の機能についても研究を継続している。
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