骨格筋特異的に発現するカルパインp94は骨格筋細胞のサルコメア内部においてM線およびN2A領域でコネクチンと直接結合する。申請者は以前に培養初代骨格筋細胞を用いたin vitroの実験により、p94のサルコメアでの局在はサルコメア長およびp94の酵素活性に依存して変化することを明らかにした。つまりサルコメアが長くなるとp94はコネクチンのN2A領域に集積し、短くなるとM線に局在変化する。本年度は、in vivo骨格筋においてもin vitroと同様にサルコメア長に応じたp94の局在変化が起きている可能性を検討した。さらにp94の局在変化がp94の酵素活性に依存することも示すために、野生型マウスと酵素不活性型p94を発現する遺伝子改変マウスの骨格筋を実験に用いた。マウスの長趾伸筋を用い、様々な伸展率で筋を固定後、免疫組織染色を行い、サルコメアの長さとp94の局在パターンを詳細に検討した。その結果、in vitroと同様にサルコメアが長くなるとp94はN2A領域に、短くなるとM線に局在変化することがin vivoにおいても確かめることができた。さらに酵素活性不全のp94では、サルコメアの長さの応じた局在変化は観察できるものの、野生型と比較すると、その反応性が有意に低下していることが示された。一連の結果から、骨格筋の伸展・収縮刺激に対してp94はその酵素活性を伴って応答し、局在を変化させる分子であることを示すことができた。
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