研究概要 |
同じ主要組織適合抗原複合体(MHC)遺伝子を持つサルを多数獲得すること、すなわち、MHC遺伝子の多型解析やMHC領域のハプロタイプ解析を行い、MHC抗原を規定する遺伝子領域のゲノム構造を明確化できれば、MHC抗原が同一な個体を多数作成することができる。これらの個体間では細胞、組織、さらに臓器の移植における拒絶反応の発生が抑制され、あるいは抑制が容易になり、また投与物質に対する免疫応答も均一となると考えられる。これには我々がすでに確立したサルの発生工学的技術、すなわち人獣共通感染症の危険性を排除したSPF(Specific Pathogen Free:特定病原菌のない個体)個体を作成に活用している体外受精、顕微授精、体外培養、受精胚移植、さらに受精胚の凍結保存と排卵周期の同期化等の技術を動員することにより個体群作出についての技術的問題を解決可能である。すなわち、MHC遺伝子を明らかにすることによって、MHCホモの遺伝学的統御個体を作成することが可能である。1.データベースの作製:当センターならびに協力研究施設に所属するカニクイザルの血液サンプルを採集し、繁殖個体の選抜手法を用いて塩基配列の解析を行った。2.繁殖個体の選抜:MHCクラスII抗原を規定するMafa-DPB1, Mafa-DQB1遺伝子、MHCクラスI抗原を規定するMafa-A, Mafa-B遺伝子の近傍に存在する4種類のマイクロサテライトマーカーの超多型領域の多型解析ならびに集団遺伝学的解析を行い、それにより得られたタイピング結果から繁殖母群(MHCがホモあるいはヘテロで一致するドナー)の選抜を行った。3.生殖細胞の譲渡システム:構築したデータベースにより選抜された個体生殖細胞のみを採取し、凍結保存、受精卵作出後に個体作出に供した。4.MHC統御個体を作出し供給の体制の基盤を確立した。
|