研究概要 |
本研究の目的は人道的エンドポイントの構築・確立をめざし,マウスやラットの各種実験処置に関わる苦痛の客観的評価根拠を集積することである。研究初年度につき,生理指標測定のためのテレメトリーシステムを活用する上で,マウスでの体内埋込み送信器の合理的装着手技や長期間にわたる安定したデータ取得技術の向上に努めた。ICRおよびC57BL/6J系マウスについて無麻酔・無拘束状態での体温や心電図,血圧を5分ごとに数目から数週間にわたり継続記録して測定実験系全体の安定性や信頼性について確認し,測定項目ごとの明暗リズムを解析した。マウスの血圧測定には新規購入のテレメトリー送信器(DSI,TA11PA-C10;重量1,4g,容積1.1cc)を使用した。血圧測定用のカテーテル先端(外径0.6mm)を顕微鏡下にて左総頸動脈に挿入し装着し,頸部背側皮下に送信器本体を埋設した。テレメトリー法を用いて麻酔や外科的実験処置後における体温や心拍数,血圧について評価した。28℃以上の高温曝露や18℃以下の低温環境下での影響,給水装置異常を想定したケージ内漏水実験等も実施した。これらの結果から,C57BL/6J系は環境温の影響が受けやすく,麻酔時の体温低下が顕著であることが明らかとなった。このような傾向は,ラットと比較してマウス特にC57BL/6J系の小型のものは相対的体表面積が大きく熱容量も小さいという特徴によるものと考えられた。ケージ交換による生理指標への影響についても観察した。ケージ交換直後のマウスやラットはいずれにおいても自発活動量が増加し,同時に体温も約1℃程度上昇した。各種体内埋め込み送信器自体のマウスへの負担についても体重変化の面から検討した。以上から研究初年度として次年度を見据えた合理的かつ迅速な研究遂行環境を整備しえた。
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