研究概要 |
これまで実験動物の病原体としてMycoplasma pulmonis, Mouse hepatits virus, Tyzzer菌およびヘリコバクター属菌の検出を電流検出型DNAチップで行いこれら病原体の検出感度および特異性が、従来法であるPCR法とほぼ同等であることを示した。今年度はあたらな病原体としてMurine Norovirus(MNV)に着目し、本ウイルスのDNAチップによる検出を目指した。本ウイルスは2003年に最初の報告がなされたが、本邦における実験用マウスでの汚染率や検査法の検証も行われていない。我々はDNAチップによる検出法の確立に先立って、本ウイルスの本邦での汚染状況、従来のウイルス検査法であるPCR法の有用性、および本ウイルス検査に用いる至適な検査材料の検討を感染実験により明らかにした。その結果、野外材料からランダムに検体を選択し、RNA polymerase遺伝子部分を増幅するRT-PCRでは1検体から増幅バンドが得られ、塩基配列解析からもMNVであることが確認された。本材料を感染材料とした感染実験では、感染マウスに同居させたICRおよびscidマウスともに56日まで糞便から核酸が検出された。また、同感染scidマウス由来胎児からは本ウイルスは検出されず、帝王切開によるウイルス除去が可能であることも明らかとなった。疫学調査の結果では59の実験動物施設中15施設(25.4%)、245のマウス盲腸検体のうち33検体13.5%)でMNV陽性を示した。このことからMNV診断にはマウス糞便が有用であること、およびMNV感染は本邦においても広くみられることが明らかとなり、DNAチップを用いた本ウイルス検出系の確立はこれまで検討してきた他の病原体と同様に有用であり、本法が利用価値のあるものになりうることが示された。
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