新たなコンジェニックマウス系統の樹立には、性成熟マウスを用いた戻し交配を行うために1世代約3~4ヶ月はかかり系統樹立までに2~5年という長い時間を要する。本来の目的である遺伝子や表現型に関する研究になかなか到達できないのが最大の欠点である。本研究では自然交配の代替として未成熟雄マウスの生殖細胞の顕微授精と多型マイクロサテライトマーカーによる選抜システムを併用することで1世代交代あたりの時間短縮を図る超スピードコンジェニック法の確立を試みた。 去年度までに、(1)未成熟雄マウスの生殖細胞を顕微授精に用いるにあたり、生後22日齢以降の円形精子細胞を用いれば安定して多数の産仔が得られること、(2)実際に既存の遺伝子改変マウス3系統4ラインを用いてC57BL/6(B6)コンジェニック化を試みたところ、106-190日でマーカー上でのコンジェニック化が確認された。 今年度は129/Svマウス由来ES細胞を用いて作成したノックアウトマウスのB6コンジェニック化(N3まで自然交配、N4は体外受精による戻し交配)を6世代343日で完了させた。また新たな試みとして、B6以外へのコンジェニック化確立を目的として、NOD/scidを受容系統としたスピードコンジェニックを現在検討中である。さらに便宜性を考慮して凍結未成熟雄マウスの生殖細胞を用いた顕微授精を試みているが、Adult精巣の凍結時より精細胞の生存率が低く、本法との併用が困難であることが分かった。
|